下処理帳 — 苦味を引く側。この帳面は苦味だけを見る
柚子の皮の下処理帳
柚子の皮(図鑑の項目)の下処理を方法ごとに並べ、苦味が動いたかどうかを根拠つきで判定します。 アク・えぐみ・渋味は別の目的として注記し、毒性や安全のための理由は書きません。
このページの内容(4 節)
判定の一覧
| 方法 | 判定 |
|---|---|
| 茹でて煮汁を捨てる | 未検証 |
| その他 | 未検証 |
| ワタ・種・皮・筋を除く | 未検証 |
| 砂糖・甘味料を加える | 未検証 |
| 水さらし | 未検証 |
読み比べて分かったこと
柚子の皮の五つの行は、どれも苦さを人が評価した実測を持たず、効き目は未確認のままです。手がかりは成分の量と手順の記事、それに柑橘一般の総説で、柚子の皮について苦さそのものを比べた資料は見当たりません。白いワタを除く行も、ナリンギンを測った桒田(2015年)がフラベドと、アルベド・内果皮・果肉をまとめたゼリー材料の二つに分けて測っただけで、ワタだけの量は示されていません。
茹でる・さらす行を並べると、思い込みとは逆の動きが見えます。森下(1994年)の測定では、水浸漬と加熱でナリンギンは63〜76%減りましたが、ノミリンは5.4から15.8 ppmへ増えました。苦味の候補の二つが逆に動くので、手順記事が書く「苦くない」という結果を、成分の側から一方向に裏づけることはできません。さらに、柑橘の加熱で苦味が生じうるという記述が二つの総説にありますが、どちらも柚子の皮を測ったものではなく、一方は引用文献に基づく二次的な要約です。
言えるのは、水浸漬と加熱でナリンギンは減るが、別の苦味の候補は増えうる、というところまでで、柚子の皮の苦さが下処理でどれだけ変わるかは、人の評価がないため分かりません。市販のマーマレードが自製品よりナリンギンが少なかったことも、著者は水さらしなどの苦味抜きのためと考えていますが、苦さを測って比べたものではありません。
この節の根拠(4)
- 柑橘類の調理加工特性に関する研究 — 桒田寛子 / 2015 / 全文確認
この節で確認した範囲: ナリンギンの測定がフラベドとゼリー材料の二区分だけであること/加熱で苦味が生じるという記述が二次的な要約であること/市販品のナリンギンが少ない理由を著者がどう考えたかの確認 - 苦くない!簡単!柚子の皮の処理と保存法 — 丸ごと小泉武夫 食マガジン編集部 / 2021 / 全文確認
この節で確認した範囲: 手順記事に官能評価や化学分析が伴わないことの確認/手順記事が苦くないと書く結果の確認 - Effect on the Taste and Flavor of Marmalade by Combining Citrus Fruits — Morishita Toshiko / 1994 / 全文確認
この節で確認した範囲: 水浸漬と加熱でナリンギンが減りノミリンが増えた値/二成分が逆向きに動くという結論の根拠の確認 - 食品の苦味成分 — 萩原清和 / 1980 / 全文確認
この節で確認した範囲: 加熱や貯蔵で苦味が生じる機構が柑橘一般の説明であること
言い伝え(未検証)
苦味が動いたかどうかを実測した資料が、この研究所の台帳にまだ無い方法です。効くとも効かないとも言いません。言い伝えの一部は、仮説として仮説採集箱にも置いています。
ワタ・種・皮・筋を除く未検証食品
条件: 白いワタ(中果皮・アルベド)をスプーン等で削ぎ取り、外果皮(フラベド)を主に使う。
白いワタだけを除いた場合の苦味を比べた資料は見当たらなかった。桒田は柚子の皮(フラベドおよびアルベドを含むゼリー材料)のナリンギン量を測定し、水さらし等の苦味抜きを行った市販品は自製品よりナリンギンが少ないと報告する。ただしフラベド単体とアルベド単体を分けて比べた値は資料に示されていない。
茹でて煮汁を捨てる未検証食品
条件: 刻んだ皮を茹でこぼす(複数回)。
資料(丸ごと小泉武夫食マガジン)は「茹でて水に浸けることで苦味を抜きます」と書き、再沸騰後1分半〜2分茹でる手順を示す(水温の記載はない)。水浸漬・加熱でナリンギンが63-76%減る一方ノミリンが増える測定(森下1994)もあるが、二成分が逆方向に動くため、この手順が苦味全体を減らすとは単純に言えない。
水さらし未検証食品
条件: 茹でこぼした後、さらに水にさらす(複数回水を替える)。
資料(丸ごと小泉武夫食マガジン)は2〜3回水を替えながら1日水にさらす手順を示す。水浸漬・加熱でナリンギンが63-76%減る一方ノミリンが増える測定(森下1994)もあり、二成分が逆方向に動くため、苦味全体が減るとは単純に言えない。
砂糖・甘味料を加える未検証食品
条件: 下処理した皮を砂糖に漬け込む、または加熱してマーマレード・砂糖漬けにする。苦味以外の目的: 保存性・嗜好性
加熱工程自体はリモニンの環化などにより苦味を新たに生じさせうるとする機構説明(萩原1980)があり、ショ糖には苦味知覚を弱める一般的な知見もあるが、柚子の皮そのものを対象にこの2つの効果を定量的に測定した資料は見当たらなかった。
その他未検証食品
条件: 下処理(アルベド除去・茹でこぼし・水さらし)をせずに、または不十分なまま加熱してマーマレード等に加工する。(候補語: insufficient_pretreatment_heating)
萩原の総説は、柑橘リモノイド一般について、加熱または12〜24時間の貯蔵で無味前駆体(リモニン)が環化し苦味を生じる場合があると書く。柚子の皮そのものを対象にした測定ではない。狙う相手: リモニン