English

受容体

TAS2R46

TAS2R46は、ヒト苦味受容体のサブタイプ。

模式図 — 写真ではなく、根拠をもとに苦味研究所が組んだ説明図

左右二枚の札。左は「チコリの成分」の札で、三つの化合物の閾値と EC50 の三行。右は「ほかの作動薬」の札で、アブシンチンの活性化範囲と親和性、応答する化合物の種類、最初の作動薬の三行。下に「広く応答する受容体では高感度は選び出している証拠にならない」の帯。

模式図(苦味研究所作成)· CC BY 4.0

TAS2R46 — セスキテルペンラクトンに広く応答する受容体

TAS2R46 を発現させた細胞で測ったチコリの苦味成分(ラクチュコピクリン、ラクチュシン、11β,13-ジヒドロラクチュシン)の閾値と EC50、ニガヨモギのアブシンチンの活性化の範囲、この受容体が応答する化合物の幅を並べた図。広く応答する受容体なので、高い感度は特定の化合物を選んでいる証拠にならない。

根拠: ev-chicory-tas2r46 · ev-chicory-tas2r46-brockhoff · ev-absinthin-tas2r46-gtopdb · ev-absinthin-tas2rs-komarnytsky · ev-absinthin-stl-context-brockhoff

説明を読む ↓

受容体 / receptor-tas2r46

このページの内容(7 節)
  1. 説明
  2. この説明の根拠(6)
  3. 主題ハブ
  4. 関連をたどる
  5. 関連項目(10)
  6. 実測値(2)
  7. 機構・受容体(5)
↑

苦味を読む

TAS2R46は、ヒトが持つ苦味受容体のサブタイプの一つである。この受容体は、化学構造の異なる幅広い苦味物質に応答する「広域に調律された」受容体として特性づけられており、セスキテルペンラクトン類だけでなく、クレロダン型・ラブダン型のジテルペノイド、さらには苦味の指標物質として使われるストリキニーネやデナトニウムにも反応する。最初にこの受容体を無給源(オーファン)の状態から特定づけたのも、セスキテルペンラクトンの一種であるハーボライドDだった。

チコリー由来のセスキテルペンラクトン類を比べた研究では、ラクチュコピクリンがこの受容体をもっとも低い濃度で活性化した。閾値0.03マイクロモル・EC50 0.35±0.06マイクロモルで、同じ研究で報告された受容体と化合物の組み合わせの中でもっとも高感度だった。近縁のラクチュシンは閾値1マイクロモル・EC50 8.85±1.17マイクロモルとより高い濃度が必要だった。ただしTAS2R46はセスキテルペンラクトン全般に広く応答する受容体であるため、この高い感度はラクチュコピクリンだけへの選択性を示す証拠ではない。

ニガヨモギの苦味成分であるアブシンチンも、TAS2R46を活性化する化合物の一つとして薬理データベースに登録されている。その親和性は先行研究をもとに、およそ10マイクロモルに相当する値として記載されている。別のレビューは、アブシンチンがTAS2R46に加えてTAS2R10・TAS2R14・TAS2R47も0.1〜100マイクロモルの範囲で活性化すると総括している。ただし、元となった一次研究そのものにおけるアブシンチンの記述は、まだ詳しく読み込めていない。

キノコAmaropostia stipticaから単離されたオリゴポリン類の受容体スクリーニングでは、オリゴポリンDは閾値濃度0.1µMでTAS2R46を活性化し、試験した化合物の中で最も低い濃度でこの受容体を活性化した。同じ化合物に対するTAS2R1の閾値は30µMであり、TAS2R46はおよそ300倍鋭敏だったことになる。

抄録の範囲では、カフェインはTAS2R46発現細胞でもカルシウムシグナルを引き起こし、香気成分(R)-シトロネラールはこの反応を、TAS2R43発現細胞での阻害よりは小さい程度に抑えると記される。具体的な阻害の程度を示す数値は抄録に示されていない。

この説明の根拠

  1. Broad tuning of the human bitter taste receptor hTAS2R46 to various sesquiterpene lactones, clerodane and labdane diterpenoids, strychnine, and denatonium

    Brockhoff A; Behrens M; Massarotti A; Appendino G; Meyerhof W / 2007 / 学術論文 / 抄録確認

    この本文で確認した範囲: セスキテルペンラクトン等への広域応答とハーボライドDによる脱オーファン化/広域応答性ゆえに高感度が選択性の証拠にならないという留保

  2. Overlapping activation pattern of bitter taste receptors affect sensory adaptation and food perception

    Lang R; Lang T; Dunkel A; Ziegler F; Behrens M / 2022 / 学術論文 / 全文確認

    この本文で確認した範囲: ラクチュコピクリン・ラクチュシンの閾値とEC50の数値、最高感度の記述

  3. IUPHAR/BPS Guide to PHARMACOLOGY: TAS2R46 (target 679) interaction records

    IUPHAR/BPS Guide to PHARMACOLOGY (curators) / 2026 / 学術データベース / 全文確認

    この本文で確認した範囲: アブシンチンをTAS2R46アゴニストとして登録するデータベース記載

  4. Activation of Extraoral Bitter Taste Receptors by Herbs and Spices in the Regulation of Incretin Signaling and Glucose Metabolism

    Komarnytsky S; Mhawish R; Wagner C / 2026 / レビュー論文 / 全文確認

    この本文で確認した範囲: TAS2R10・14・46・47の0.1〜100µM域での活性化という総括

  5. Taste-Guided Isolation of Bitter Compounds from the Mushroom Amaropostia stiptica Activates a Subset of Human Bitter Taste Receptors

    Schmitz LM; Lang T; Steuer A; Koppelmann L; Di Pizio A; Arnold N; Behrens M / 2025 / 学術論文 / 全文確認

    この本文で確認した範囲: オリゴポリンDの閾値0.1µMとTAS2R1比の鋭敏さ

  6. The Odorant (R)-Citronellal Attenuates Caffeine Bitterness by Inhibiting the Bitter Receptors TAS2R43 and TAS2R46

    Suess B; Brockhoff A; Meyerhof W; Hofmann T / 2018 / 学術論文 / 抄録確認

    この本文で確認した範囲: シトロネラールによるカフェイン応答の弱い阻害

関連をたどる

ラクチュコピクリン →活性化する→ TAS2R46

アブシンチン →活性化する→ TAS2R46

オリゴポリンD →活性化する→ TAS2R46

実測値(2)

種別化合物対象値条件出典
受容体EC50ラクチュシンTAS2R468.85±1.17 µMHEK293細胞アッセイLang R, 2022
受容体EC50ラクチュコピクリンTAS2R460.35±0.06 µMHEK293細胞アッセイLang R, 2022

値は各出典の報告値そのまま(単位・条件を併記)。閾値・EC50はパネル・手法依存で、単一の真値ではありません。

構造化された主張 — 節を開くと、主張ごとの確度・根拠・限界が読めます

機構・受容体(5)

ラクチュコピクリンはTAS2R46を活性化する支持あり

範囲: 引用研究における培養細胞系での受容体試験

注記: 同論文は他のチコリーラクトンによる重複した受容体活性化も報告している。

ラクチュコピクリンはTAS2R46を閾値0.03 uM・EC50 0.35 +/- 0.06 uMで活性化し、本研究で報告された中で最も高感度な受容体–化合物ペアであった; ラクチュシンは同受容体を閾値1 uM・EC50 8.85 +/- 1.17 uMで活性化。11beta,13-dihydrolactucinは閾値30 uMで、試験濃度域ではEC50は決定されなかった。
限界: EC50値は本文中の記述ではなくTable 1に基づく。この受容体は本研究で試験した3化合物(ラクチュコピクリン・ラクチュシン・11beta,13-dihydrolactucin)すべてに応答したため、ラクチュコピクリンへの高感度は同化合物だけへの選択性の証拠ではない。
出典: Overlapping activation pattern of bitter taste receptors affect sensory adaptation and food perception(Lang R; Lang T; Dunkel A; Ziegler F; Behrens M, 2022)・全文確認
文脈: hTAS2R46を、セスキテルペンラクトン類に加えクレロダン型・ラブダン型ジテルペノイド、ストリキニーネ、デナトニウムにも広く応答する受容体として独立に特性化しており、最初の脱オーファン化はセスキテルペンラクトンのherbolide Dによる。ラクチュコピクリンはセスキテルペンラクトンに属するため、Lang 2022の結果はこの受容体についてすでに確立された作動薬クラスの内側にある。
限界: ラクチュコピクリンとラクチュシン自体は抄録に名前がなく、試験されたとも示されていない; これはクラスレベルの傍証であって直接の追試ではない。広い同調性は逆方向にも働く: 多数のセスキテルペンラクトンに応答する受容体は、ラクチュコピクリンへの選択性の証拠としてはより弱い。抄録レベルの抽出で効力の数値はない。
データを表示compound-lactucopicrin —activates→ receptor-tas2r46
claim: clm-chicory-tas2r46 / type: mechanism / 更新: 2026-08-30
アブシンチンはTAS2R46を活性化する支持あり

範囲: 異種発現系の受容体アッセイのキュレーション・レビュー総括

注記: 一次論文(Brockhoff 2007)の個別数値は抄録に無く、全文未読。受容体セットはキュレーション(46のみ)とレビュー(10/14/46/47)で幅がある点をそのまま保持。

absinthin は TAS2R46 のアゴニストとして affinity 5.0(-log M)で収載。出典 PMID 17595105。
限界: キュレーションレベルの読解であり、一次データの再確認はしていない。
出典: IUPHAR/BPS Guide to PHARMACOLOGY: TAS2R46 (target 679) interaction records(IUPHAR/BPS Guide to PHARMACOLOGY (curators), 2026)・全文確認
absinthin は TAS2R10, 14, 46, 47 を 0.1-100 µM 域で活性化するとして収載。
限界: レビューの引用元(Bayer et al. 等)は未読。
文脈: hTAS2R46 はセスキテルペンラクトン類に広域応答する受容体として特性評価された(抄録には個別化合物としての absinthin の明記はない)。
限界: 個別結果は本文・表(未読)。
データを表示compound-absinthin —activates→ receptor-tas2r46
claim: clm-absinthin-tas2rs / type: mechanism / 更新: 2026-08-31
オリゴポリンDはTAS2R46を活性化する支持あり

範囲: 層: 細胞。ヒト苦味受容体26種の異種発現細胞を用いたスクリーニングとカルシウムイメージングによる閾値濃度測定(Table 2)。

Table 2: oligoporin D (3), threshold (µM): TAS2R1=30, TAS2R4=1, TAS2R14=3, TAS2R41=30, TAS2R46=0.1。本文は、oligoporin D (3) が 100 nM の濃度ですでに TAS2R46 を活性化したと述べる。
限界: 単一のキノコ種から単離した化合物に対する結果であり、食品としての官能評価は行われていない。
出典: Taste-Guided Isolation of Bitter Compounds from the Mushroom Amaropostia stiptica Activates a Subset of Human Bitter Taste Receptors(Schmitz LM; Lang T; Steuer A; Koppelmann L; Di Pizio A; Arnold N; Behrens M, 2025)・全文確認
データを表示compound-oligoporin-d —activates→ receptor-tas2r46
claim: clm-w71g1-tas2r46-oligoporin-d-potent / type: mechanism / 更新: 2026-09-07
カフェインはTAS2R46を活性化する予備的

範囲: 層: 細胞。カフェイン感受性が報告されている複数のヒト苦味受容体を用いた細胞機能実験。

注記: Suess et al. 2018は購読制限で全文未到達、OpenAlex抄録復元での確認。

(R)-シトロネラールは、TAS2R43を発現する細胞でのカフェインによるカルシウムシグナルを完全に遮断し、TAS2R46を発現する細胞でもそれより小さい程度で遮断することが分かった。
限界: 全文未読、抄録段階の記述のみ。「lesser extent」の具体的な阻害率・IC50は抄録に記載なし。
出典: The Odorant (R)-Citronellal Attenuates Caffeine Bitterness by Inhibiting the Bitter Receptors TAS2R43 and TAS2R46(Suess B; Brockhoff A; Meyerhof W; Hofmann T, 2018)・抄録確認
データを表示compound-caffeine —activates→ receptor-tas2r46
claim: clm-w71g1-tas2r46-caffeine-citronellal / type: mechanism / 更新: 2026-09-07
ポリメトキシフラボン類はTAS2R46を活性化すると報告されている予備的

範囲: 層: 文献。計算科学(分子ドッキング)による予測で、細胞や官能の実験ではない。ヒト苦味受容体T2R46の cryo-EM 構造(PDB 7XP6)に対する、タンゲレチン・ノビレチン・アマロゲンチン(陽性対照ストリキニーネも別途)の分子ドッキングシミュレーション。

注記: 計算科学的なドッキング予測であり、細胞アッセイ等による機能的な受容体活性化の確認ではないためpreliminary。タンゲレチン・ノビレチンが in vitro でT2R46を活性化するという記述はKuroda et al. 2016の引用(孫引き)だが、結合エネルギー値そのものは本論文自身のドッキング計算という一次データ。

in vitro の研究で T2R46 を活性化することが示されているポリフェノール(tangeretin、nobiletin (Kuroda et al., 2016)、amarogentin (Meyerhof et al., 2010))の結果を Fig. 5 に示す。すべてのポリフェノールが W883.32 との相互作用を示し、tangeretin、nobiletin、amarogentin の結合エネルギースコアはそれぞれ -7.4983 kcal/mol、-7.8191 kcal/mol、-9.4206 kcal/mol であった。
限界: 計算科学的予測にとどまり、実際の細胞アッセイ等による機能的な受容体活性化は本論文では確認していない(in vitro活性化自体はKuroda 2016の引用)。
出典: Verification of the interaction between human bitter taste receptor T2R46 and polyphenols; Computational chemistry approach(Shimizu T; Fushimi T; Ohno R; Yasuyuki F; Aso K; Jacobs UM; Nureki O; Suhara Y; Calabrese V; Osakabe N, 2024)・全文確認
データを表示compound-pmfs —is_reported_to_activate→ receptor-tas2r46
claim: clm-w72a2-pmf-t2r46-docking / type: mechanism / 更新: 2026-09-08

↑ このページの上へ ・ ← 図鑑(受容体)へ戻る