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概念

えぐみ

egumi (Japanese food descriptor)

えぐみは、「えぐい」「えぐみ」と表現される日本語の食品官能語。苦味のような一つの基本味へ固定せず、舌や喉のいがらっぽさ、刺激、後に残る不快感など、食材と用例ごとの定義を添えて扱う。

模式図 — 写真ではなく、根拠をもとに苦味研究所が組んだ説明図

三枚の札。「味覚・苦味」「触覚系・渋味」「口内・喉の感じ・えぐみ」の順に、各二行の定義。下に「同じ食品の中で三つは別々に測られている」の帯。

模式図(苦味研究所作成)· CC BY 4.0

苦味・渋味・えぐみ——三つを分けて書く

日本語で混ざりやすい苦味・渋味・えぐみを、炊いたご飯の評価語辞書、しょうゆの官能評価研究、ホウレンソウの成分分離研究がそれぞれどう操作的に定義・分離しているかで三枚の札に並べた図。強さの比較や優劣は表していない。

根拠: ev-egumi-rice-definition · ev-egumi-spinach-separate-bitter · ev-egumi-soy-sauce-definition-fulltext

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概念 / concept-egumi

このページの内容(10 節)
  1. 説明
  2. この説明の根拠(3)
  3. 主題ハブ
  4. 別名
  5. 関連をたどる
  6. 関連項目(10)
  7. 仮説採集箱(3)
  8. 組成・含有(1)
  9. 感覚(3)
  10. 文化(4)
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苦味を読む

「えぐみ」は、苦味の別名として片づけるには広く、基本味の一つとして固定するには揺れの大きい日本語である。農研機構を中心とする研究班は、「米飯の官能評価用語体系」を作った。「官能評価」は、人が目・鼻・口などの感覚で、ご飯の見た目、香り、味、食感を調べること。「用語体系」は、その特徴を同じ言葉で記録し比べるための「評価語の辞書」である。ここで米飯とは、炊いた米、つまりご飯を指す。その辞書では、「苦味がある」は舌で感じる基本味、「えぐみがある」は舌や喉にアクがまとわりつくようないがらっぽさとして、二つの項目に分けられた。少なくともこのご飯の評価では、えぐみは苦さの強弱だけを言い換えた語ではない。

ホウレンソウでは、さらに中身へ踏み込んだ実験がある。研究者はシュウ酸溶液を味わった後に残る不快な感覚を「シュウ酸味」と定め、葉の水抽出物を二つの画分に分けた。するとシュウ酸とシュウ酸味は水側へ、苦味はエタノール側へ回収された。この試料の苦味物質はシュウ酸ではなく、えぐみとして語られてきた残留感と苦味を分けて考えられる。ただし、この一例から、すべてのえぐみをシュウ酸で説明することはできない。

だから苦味研究所では、えぐみを一個の受容体に結びつける感覚軸ではなく、詳しく聞き直すための入口にする。舌の上で味として立つのか。頬や歯ぐきが乾くのか。喉の奥がいがらっぽいのか。飲み込んだ後まで刺激が残るのか。同じ「えぐい」でも、食材、部位、下処理、感じた場所と時間が変われば、指している現象は違うかもしれない。この未確定さは欠陥ではなく、料理の言葉から次の実験を設計できる余白である。

この説明の根拠

  1. 米飯の官能評価用語体系の構築

    早川文代; 梅本貴之; 風見由香利; 中野優子; 吉澤浩二; 諏訪憲久; 安藤美紀子 / 2025 / 学術論文 / 全文確認

    この本文で確認した範囲: 炊いたご飯の用語体系が苦味とえぐみを別項目で定義したこと/えぐみを食材文脈と口腔内の位置・時間を伴う語として扱う根拠

  2. ホウレンソウのえぐ味はシュウ酸に由来するか

    堀江秀樹; 伊藤秀和 / 2006 / 学術論文 / 全文確認

    この本文で確認した範囲: ホウレンソウ分画でシュウ酸味と苦味が別画分へ回収されたこと/一つの食品内でも苦味から分けて検討できた実例

  3. 定量的記述分析法による市販の生しょうゆと火入れしょうゆの評価および日本のしょうゆの特徴の体系化

    今村美穂; 片山弘 / 2017 / 学術論文 / 全文確認

    この本文で確認した範囲: しょうゆでは渋味とえぐ味が複合属性として使われた別の用例

別名: えぐ味(ja)

関連をたどる

えぐみ →と分けて測定できる→ 苦味 →と分けて測定できる→ 渋味

苦味 →と同義ではない→ えぐみ

仮説採集箱(3)

仮説は事実主張ではありません。面白さを探索の入口として保存し、これから資料・聞き書き・観察で確かめます。

えぐみは、一つの感覚か編集仮説

「えぐい」と呼ばれる経験は、苦味、乾き、ざらつき、刺激、喉に残るいがらっぽさが食材ごとに異なる割合で束ねられたものなのだろうか?

由来: 編集部が立てた問い

注記: 炊いたご飯のための操作的定義とホウレンソウの分画研究を並べて生まれた編集仮説。単一機構としては扱わない。

「香ばしい」は食品ごとに何を指しているのか編集仮説

日本語の「香ばしい」は、えぐみと同様に食品横断で使われる官能語だが、食品ごとにどの香り・味・食感と結びつけて使われているのだろうか?

由来: 編集部が立てた問い

注記: 編集部対話で出た問い。えぐみ項目で使った方法を当てられるかを見る。

「おこげ」を珍重する文化は世界にいくつもあるのか編集仮説

日本のおこげ、韓国のヌルンジ、スペインのソカラット、イランのタディグのように、鍋底の焦げた飯をむしろご馳走として珍重する文化が各地に語られる。これらの焦げの風味はどう記述されており、香ばしさと苦味の境界はどこに引かれているのだろうか? 横断的に比較した資料は存在するのだろうか?

由来: 編集部が立てた問い

注記: 編集部の構造仮説(H)。「焦げを珍重する文化圏」という横断類型の探索。

仮説採集箱をすべて見る →

構造化された主張 — 節を開くと、主張ごとの確度・根拠・限界が読めます

組成・含有(1)

苦味はえぐみと同義ではない予備的

範囲: 層: 食品。ホウレンソウ生葉・水抽出液・茹で汁と、その固相抽出分画(水溶出画分/エタノール溶出画分)。少人数(著者を含む)による官能評価。

注記: 出典の要約は「ホウレンソウの苦味については、シュウ酸とは異なる成分によるものと考えられる」と結論している。これは苦味の原因についての著者の考察で、苦味とえぐ味が同義でないことを直に示したものではないため、根拠の関係を contextualizes とした(2026-10-21 広げる段 N5 段 C 第 4 束、Codex の照合)。苦味の成分は同定されていない。

文脈: 要約は「ホウレンソウの苦味については、シュウ酸とは異なる成分によるものと考えられる」と結論している。
限界: パネルの訓練が困難で、著者を含めた少人数による官能評価(正確な人数は記載なし)。シュウ酸味・苦味の強度は+/-の記号評価のみで数値化されておらず、統計の検定の記載もない。苦味の成分は同定されていない。苦味の原因についての著者の考察で、苦味とえぐ味が同義でないことを直に示したものではない。
出典: ホウレンソウのえぐ味はシュウ酸に由来するか(堀江秀樹; 伊藤秀和, 2006)・全文確認
データを表示sensation-bitter —is_not_synonymous_with→ concept-egumi
claim: clm-w67d-spinach-bitter-not-egumi / type: composition / 更新: 2026-10-21

感覚(3)

えぐみはその文脈で次のように定義される: 舌や喉にアクがまとわりつくような、いがらっぽい感じ支持あり

範囲: 人が目・鼻・口などの感覚で炊いたご飯を調べ、特徴を同じ言葉で記録するために作られた評価語の辞書

注記: 論文では「米飯の官能評価用語体系」と呼ぶ。炊いたご飯という製品領域で使うための定義であり、えぐみ一般の唯一の定義や単一受容機構を示すものではない。

炊いたご飯の評価語の辞書は、苦味を基本味のうちの苦味(舌の味覚で感じられる苦味)とし、えぐみを「舌や喉にアクがまとわりつくような,いがらっぽい感じ」と定義する。えぐみの補足として、餅を飲み込んだ後に口中の奥に残るいがらっぽい感じ、あるいはぬかから感じられるいがらっぽい感じを挙げ、雑味が強くなるとえぐみになるとする。どちらもネガティブな表現として使われる。
限界: 炊いたご飯に合わせて作られた言葉の辞書であり、野菜や飲みものにおけるえぐみの意味を直接定義しない。苦味とえぐみは 120 語の用語に含まれ CATA の選択肢にもなったが、この根拠が使うのは定義の文だけで、強度の評点や項目ごとの選択率の数値は本文にない(図 5 は用語スコアの図)。補足の例(餅・ぬか)は米飯での例である。
出典: 米飯の官能評価用語体系の構築(早川文代; 梅本貴之; 風見由香利; 中野優子; 吉澤浩二; 諏訪憲久; 安藤美紀子, 2025)・全文確認
データを表示concept-egumi —is_defined_in_context_as→ (上の主張の文)
claim: clm-egumi-rice-definition / type: sensory / 更新: 2026-08-31
えぐみは苦味と分けて測定できる支持あり

範囲: ホウレンソウから水で取り出した成分を吸着材に通し、性質の違う二群へ分けた一研究

注記: 研究内で意味を決めた「シュウ酸味」は水で流れ出た側、苦味はその後エタノールで取り出した側に集まった。すべての食品のえぐみがシュウ酸由来という主張ではない。

ホウレンソウ(パレード)の葉身の水抽出液を C18 の吸着材で分けると、シュウ酸と、研究内で意味を決めた「シュウ酸味」は水で流れ出た画分に残り(シュウ酸 368 mg/L、シュウ酸味 ++)、苦味はその後エタノールで取り出した画分で感じられた(シュウ酸 4 mg/L、シュウ酸味 −、苦味 +)。未分画の液はシュウ酸 380 mg/L・シュウ酸味 ++・苦味 + だった。著者らは苦味物質がシュウ酸ではないと解釈した。
限界: 著者を含む少人数(正確な人数は記載なし)が強さを記号(− 〜 +++)で記録した評価で、統計の検定の記載はない。えぐみ全般に使える共通尺度ではない。口内で結晶ができるという説明は別の試験用条件に基づく著者の解釈である。
出典: ホウレンソウのえぐ味はシュウ酸に由来するか(堀江秀樹; 伊藤秀和, 2006)・全文確認
データを表示concept-egumi —can_be_measured_separately_from→ sensation-bitter
claim: clm-egumi-spinach-separate-bitter / type: sensory / 更新: 2026-08-31
えぐみは次のように語られている: 渋味とえぐ味をまとめた一つの評価項目観察結果

範囲: 訓練を受けた評価者が決められた言葉ごとに強さを採点し、市販しょうゆ12銘柄を比べた研究

注記: 確認できた抄録では渋味とえぐ味を別々の点数へ分けられない。炊いたご飯やホウレンソウで使われた定義とも同一視しない。

6 組(12 銘柄)を 13 名が比べると、火入れしょうゆは生しょうゆより後味の苦味が強かった(平均±標準誤差 1.7±0.2 対 1.2±0.3、p=0.031)。苦味(1.9±0.2 対 1.5±0.3)と、渋味とえぐ味をまとめた項目(1.8±0.2 対 1.5±0.3)は p=0.063 で、p<0.1 の傾向にとどまる。
限界: 渋味とえぐ味は通常は別の項目だが、今回はどちらも極めて弱くしか感じられず区別が困難だったので、まとめて評価したと著者は書く。一項目の中で渋味とえぐ味の寄与は分けられない。供試は同じメーカーの別々の市販品の対で(同一の原液の加熱前後ではない)、個別の火入れの温度・時間は記載なし。大豆・小麦・食塩以外の原材料をできるだけ使っていないものを選んだが、表 1 には脱脂加工大豆・アルコール・みりんを含む銘柄がある。比較の単位は 6 対(銘柄の平均)。しょうゆ以外へ同じ言葉の構造を広げられない。
「渋味・えぐ味」の定義は表2で「渋柿などを食べた時に感じる舌が収れんする感じ,もしくは硬水やニガリの独特な味」と操作的に定義されている。苦味は「カフェイン」、苦味の後味は「しょうゆを味わって10秒後も舌に残る苦味」とそれぞれ別項目として定義され、3 属性は別々の評価項目として評価された。
限界: 表2の定義文それ自体は渋味とえぐ味を分離しない複合定義のままである。
データを表示concept-egumi —is_presented_as→ (上の主張の文)
claim: clm-egumi-soy-sauce-compound-label / type: sensory / 更新: 2026-08-31

文化(4)

えぐみは辞典で『あくが強くて、いがらっぽい感じがする。えがらっぽい。』用例「山菜を食べたあと、のどが―・い」と定義される文脈資料

範囲: デジタル大辞泉「蘞い(えぐい)」語義1(コトバンク掲載)

注記: 見出し漢字表記は「蘞い/醶い」。

逐語:『あくが強くて、いがらっぽい感じがする。えがらっぽい。』
限界: 紙媒体の原本(小学館デジタル大辞泉)そのものは未確認。コトバンクによる転載。
出典: 蘞い・全文確認
データを表示concept-egumi —is_defined_in_dictionary_as→ (上の主張の文)
claim: clm-w59a-daijisen-egui-sense-taste / type: cultural / 更新: 2026-09-04
えぐみは辞典で『俗に、むごたらしいさま。また、どぎついさま。』用例「―・い描写」と定義される文脈資料

範囲: デジタル大辞泉「蘞い(えぐい)」語義2(コトバンク掲載)

注記: 俗用としての比喩義。

逐語:『俗に、むごたらしいさま。また、どぎついさま。』
限界: 紙媒体の原本(小学館デジタル大辞泉)そのものは未確認。コトバンクによる転載。
出典: 蘞い・全文確認
データを表示concept-egumi —is_defined_in_dictionary_as→ (上の主張の文)
claim: clm-w59a-daijisen-egui-sense-colloquial / type: cultural / 更新: 2026-09-04
えぐみは辞典で『我が強くて思いやりのないさま。きつい。』引用「では何か…、―・い事でもお言いなしたのですかい?」〈三重吉・小鳥の巣〉と定義される文脈資料

範囲: デジタル大辞泉「蘞い(えぐい)」語義3(コトバンク掲載)

注記: 鈴木三重吉「小鳥の巣」からの引用。

逐語:『我が強くて思いやりのないさま。きつい。』引用「では何か…、―・い事でもお言いなしたのですかい?」〈三重吉・小鳥の巣〉。
限界: 紙媒体の原本(小学館デジタル大辞泉)そのものは未確認。コトバンクによる転載。
出典: 蘞い・全文確認
データを表示concept-egumi —is_defined_in_dictionary_as→ (上の主張の文)
claim: clm-w59a-daijisen-egui-sense-character / type: cultural / 更新: 2026-09-04
えぐみは『えご・い〔ゑごい〕【×蘞い/×醶い】[形][文]ゑご・し[ク]「えぐい」に同じ。』引用「苦く、―・く、すっぱく…稀有な声だぞ」に記録されている文脈資料

範囲: デジタル大辞泉「蘞い(えごい)」項(コトバンク掲載)

注記: 「えぐい」と同義の異形「えごい」が同じ辞典項目内に併記されている。

逐語:『「えぐい」に同じ。』引用「苦く、―・く、すっぱく…稀有な声だぞ」。
限界: 紙媒体の原本(小学館デジタル大辞泉)そのものは未確認。コトバンクによる転載。
出典: 蘞い・全文確認
データを表示concept-egumi —is_documented_in→ (上の主張の文)
claim: clm-w59a-daijisen-egoi-variant / type: cultural / 更新: 2026-09-04

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