下処理帳 — 苦味を引く側。この帳面は苦味だけを見る
なす(茄子)の下処理帳
なす(茄子)(図鑑の項目)の下処理を方法ごとに並べ、苦味が動いたかどうかを根拠つきで判定します。 アク・えぐみ・渋味は別の目的として注記し、毒性や安全のための理由は書きません。
このページの内容(4 節)
判定の一覧
| 方法 | 判定 |
|---|---|
| 油で加熱 | 未検証 |
| 水さらし | 未検証 |
読み比べて分かったこと
ナスの下処理を読み比べて言えるのは、苦味ではなく渋味の話で、しかも人の舌で調べたのは調理法ごとの渋味と、煮るときの油の有無だけ、ということです。1986年の14名の順位法では渋味は蒸しが最も強く揚げが最も弱く、煮るときに油を加えたナスは11名対3名で渋味が弱いと判定されました。ところがどちらの比較でも、全ポリフェノール量とクロロゲン酸量は渋味の順と一致せず、油を加えた煮ナスと加えない煮ナスでは成分量に差がありませんでした。成分が減ったのではなく感じ方が変わった、と読める並びですが、その理由は著者の推論で、実測はありません。
同じ著者の1988年の測定では、8つ割りを水に5分ずつ3回さらしても全ポリフェノールの3.1%しか水に出なかった一方、炒めると51.7%、揚げると37.3%が表面の付着油に移っていました。成分の行き先で並べると、水さらしより油のほうがはるかに多くを動かしています。ただしどちらも成分の測定だけで渋味の官能は伴わず、主張は予備的な段階にあり、ナスは1種類、切り方も8つ割りの1通りです。どこまで言えるかというと、油を使う調理で渋味が弱く感じられたことまでで、苦味についてはどの下処理でも何も言えず、水さらしで渋味が変わらないと言える官能の資料もまだありません。
この節の根拠(2)
- ナスの渋味におよぼす食用油の影響 — 黒澤 祝子 / 1986 / 全文確認
この節で確認した範囲: 調理法ごとの渋味の順位と成分量の不一致(全文)/油を加えた煮ナスの渋味と成分量に差が無いこと(全文) - 食用油調理におけるナスの全ポリフェノールとクロロゲン酸について — 黒澤 祝子 / 1988 / 全文確認
この節で確認した範囲: 水さらしで水に出た全ポリフェノールの割合(全文)/炒め・揚げで付着油へ移った全ポリフェノールの割合(全文)
言い伝え(未検証)
苦味が動いたかどうかを実測した資料が、この研究所の台帳にまだ無い方法です。効くとも効かないとも言いません。言い伝えの一部は、仮説として仮説採集箱にも置いています。
油で加熱未検証食品
条件: 炒める・揚げる、または煮るときに油を加える(14名の順位法・煮物は3名対11名)。苦味以外の目的: 渋味
苦味は測られていない。渋味は、蒸し・焼き・煮る・炒め・揚げの順に弱く、煮るときに油を加えると弱かった。炒めでは全ポリフェノールの51.7%、揚げでは37.3%が付着した油へ移っていた。
水さらし未検証食品
条件: 8つ割りを5倍重量の水(20℃)に5分ずつ3回さらす(成分の測定のみ)。苦味以外の目的: 渋味
苦味も渋味も味では測られていない。水に出たのは全ポリフェノールの3.1%、クロロゲン酸の1.1%で、大半はナスに残った。