下処理帳 — 苦味を引く側。この帳面は苦味だけを見る
ゴーヤの下処理帳
ゴーヤ(図鑑の項目)の下処理を方法ごとに並べ、苦味が動いたかどうかを根拠つきで判定します。 アク・えぐみ・渋味は別の目的として注記し、毒性や安全のための理由は書きません。
このページの内容(5 節)
判定の一覧
| 方法 | 判定 |
|---|---|
| 吸着(シクロデキストリン・樹脂・活性炭) | 減る |
| 発酵 | 減る |
| 発酵 | 減る |
| 旨味を加える(かつお節・出汁) | 減る |
| 塩水浸漬 | 変わらない |
読み比べて分かったこと
ゴーヤの下処理を並べると、人の舌で苦味が下がったのは、苦味の成分と結びつく物を足す方法と乳酸発酵で、塩水に浸ける方法では下がりませんでした。3.5%の食塩水に60分浸けた果実の果汁は、訓練パネル10名の苦味評点が10.6で、未処理の10.7と差がなく、下がったのは酸味のほうでした。塩で苦味が抜けるという予想に反する結果です。ただしこの試験では、浸けた果実をすすいで湯通ししてから搾っており、塩だけの働きは切り分けられていません。単一の研究、単一の果実のロットでの結果でもあります。
足す方法どうしを比べると、効き方の説明が似ています。かつお節では、削り節そのものを加えると生のゴーヤでもチャンプルーでも苦味の評価が下がりましたが、熱水で取っただしは下げたものの削り節ほどではなく、濃くしても強まりませんでした。だしがら(だしを取ったあとの固形の残り)を詰めた筒にゴーヤのエキスを通すと、苦味の成分は水では流れ出ず、著者は固形物が苦味の成分を吸着すると考えています。β-シクロデキストリンも、ニガウリの抽出物に0.25%加えると苦味が約33%、0.75%以上では90%を超えて下がり、成分を包み込む複合体ができることが分析で裏づけられています。ただ、かつお節の試験は少人数のパネル、β-シクロデキストリンは抽出物での測定で、同じ物差しで効き目を比べたものではありません。
乳酸発酵は、測り方の違う3つの結果が同じ向きを示した方法です。人のパネルでは発酵した果汁と発酵しない果汁の苦味の順位に有意な差があり、別の研究では電子舌の苦味の応答が、生の果汁、発酵しない搾汁、発酵した搾汁の順に小さくなりました。同じ研究の成分分析では、苦味への寄与が最も大きいと著者が見るモモルジシンI・IIが発酵で減り、その前駆体のモモルジシンUは2倍を超えて増えています。ただし菌株や発酵の条件は研究ごとに違い、人の評価で低下を感じた人の数も本文には示されていません。言えるのは、ゴーヤの汁では発酵が苦味を下げる向きに働くというところまでで、固形のゴーヤや料理に移せるかは確かめられていません。
この節の根拠(5)
- Influence of sodium chloride treatment and polysaccharides as debittering agent on the physicochemical properties, antioxidant capacity and sensory characteristics of bitter gourd (Momordica charantia) juice — Siti Rashima R; Maizura M; Kang WM; Fazilah A; Tan LX / 2017 / 全文確認
この節で確認した範囲: 食塩水に浸けても苦味評点が変わらず酸味が下がったこと(全文) - Reduction of Bitterness of the Bitter Gourd by Katsuobushi — Maehashi K; Aritome Y; Matano M; Yamamoto Y / 2008 / 全文確認
この節で確認した範囲: 削り節で苦味が下がり、だしがらの筒に苦味の成分が留まったこと/熱水のだしでは下がったが削り節ほどではなかったこと(全文) - The effect of carboxymethyl cellulose and beta-cyclodextrin as debittering agents on bitterness and physicochemical properties of bitter gourd extract — Tran CTH; Nargotra P; Pham HTC; Lieu DM; Huynh PK; Wang HD; Dong CD; Kuo CH / 2023 / 全文確認
この節で確認した範囲: β-シクロデキストリンの濃度と苦味の下がり幅、包接の分析(全文) - Effects of fermentation conditions using Lactobacillus plantarum on antioxidant properties and bitterness of bitter gourd (Momordica charantia L.) juice — Nguyen Trang; Nguyen Ha / 2022 / 全文確認
この節で確認した範囲: 人のパネルでの発酵と非発酵の苦味の順位の差と、人数が本文に無いこと - Influences of Lactiplantibacillus plantarum dy-1 Fermentation on the Bitterness of Bitter Melon Juice, the Composition of Saponin Compounds, and Their Bioactivities — Bai J; et al. / 2024 / 全文確認
この節で確認した範囲: 電子舌の苦味の応答が生・非発酵・発酵の順に小さいこと(全文)/発酵でモモルジシンI・IIが減りUが増えたこと(全文)
減る
吸着(シクロデキストリン・樹脂・活性炭)減る食品
条件: 抽出物へ β-シクロデキストリン 0.25% を添加
ニガウリ抽出物に β-シクロデキストリンを 0.25% 加えると苦味が約 33% 減った(緩衝材としての包接。受容性の上昇とは別に記録)。狙う相手: シクロデキストリン類
範囲: 層: 食品。ニガウリ抽出物への β-シクロデキストリン添加。受容性の主張(同じ資料群)とは分けて、苦味の強さそのものの低下を記録する行。
注記: 受容性の上昇を記録した既存の主張から、苦味の強さの低下だけを切り出した。
データを表示
ingredient-bitter-gourd —has_perceived_bitterness_suppressed_by→ (上の主張の文)発酵減る食品
条件: Lactobacillus plantarumで発酵時間・温度・接種量を変えた官能比較。別研究では L. plantarum dy-1 株を接種した果汁。
乳酸発酵させると、多くのパネリストが非発酵の対照より苦味が下がったと感じ、電子舌でも発酵後の苦味応答が最も小さかった。
範囲: L. plantarumの時間・温度・接種量を変えた官能比較
注記: 大多数のパネリストが非発酵対照より苦味低下を認識。全発酵食品へ一般化しない。
データを表示
process-bitter-gourd-lactic-fermentation —reduces_perceived_bitterness_of→ (上の主張の文)発酵減る食品
条件: Lactiplantibacillus plantarum dy-1による発酵。生搾り(FBMS)・非発酵搾汁(NFBMS)・発酵搾汁(FJBMS)をUPLC-Q-TOF-MS/MSで比較。
dy-1による乳酸発酵で、苦味トリテルペノイドのモモルジシンI・IIの含量は、非発酵搾汁より発酵搾汁で有意に低かった(前駆体のモモルジシンUは逆に2倍超に増加した)。狙う相手: モモルジシンI
範囲: 層: 食品。UPLC-Q-TOF-MS/MSのVIPプロット解析による、生搾り(FBMS)・非発酵(NFBMS)・dy-1発酵(FJBMS)搾汁のサポニン組成比較。
データを表示
process-bitter-gourd-lactic-fermentation —reduces→ compound-momordicine-i旨味を加える(かつお節・出汁)減る食品
条件: かつお節(削り節)を加える(生食・加熱調理いずれの場合も)
かつお節を加えて食べると、チャンプルーでも生のゴーヤでも苦味が有意に下がった。ゴーヤのエキスに加えた実験では、だし(熱水抽出液)でも下がったが、削り節ほどではなかった。著者は、苦味の成分が固形物に吸着されると考えている。狙う相手: 鰹節
範囲: 層: 食品。生ゴーヤ・ゴーヤーチャンプルーおよびゴーヤエキスを用いたヒト官能評価と、かつお節だしがらカラムによる分画実験。
データを表示
ingredient-bitter-gourd —can_be_debittered_by→ (上の主張の文)範囲: 層: 食品。生のゴーヤおよび加熱調理したゴーヤへのかつお節添加。
注記: 要旨の記述に基づく(本文の日本語部分はPDFのフォント埋め込みの問題で文字化けし、官能評点等の具体的数値は確認できなかった)。著者はかつお節が苦味物質を吸着(結合)することで脱苦味効果を持つと結論する。
データを表示
ingredient-bitter-gourd —has_perceived_bitterness_suppressed_by→ ingredient-katsuobushi範囲: 層: 食品。ゴーヤへのかつお節「抽出物」添加(固形物を使わない条件)。
注記: 著者は、脱苦味には抽出液中への溶出成分ではなく固形物による吸着(結合)が主に関与すると解釈している。 2026-09-26: 全文(図2・p.187)で読み直し。英語要旨の「significant debittering effect was not achieved by using the extract」は「かつお節と同程度の著しい効果は得られなかった」の意で、図2ではエキス添加で p<0.05 の低下がある。
データを表示
ingredient-bitter-gourd —has_perceived_bitterness_unchanged_by→ ingredient-katsuobushi変わらない
塩水浸漬変わらない食品
条件: 果実片を3.5%(w/v)NaCl溶液に25℃で60分浸漬(15cmラインスケールで苦味10.6±1.1、未処理10.7±1.7、p>0.05)。
3.5%の食塩水に60分浸けても、訓練パネルの苦味評点は未処理の果実と有意差がなかった(酸味は有意に下がった)。
範囲: マレーシアの1研究で訓練パネル10名が評価したゴーヤジュース
注記: 塩もみで苦味が減るという民間的予想に反するヌル結果。同じ処理は苦味でなく酸味を有意に低減した。単一研究・単一果実ロット。
データを表示
ingredient-bitter-gourd —has_perceived_bitterness_unchanged_by→ (上の主張の文)